火砲と砲兵(前編)

自衛隊系記事

自分が砲兵だったこともあって、火砲というものについて色々と調べていた時期がありました。

私は観測手だったので火砲の操作自体は基本的なことしか分かりませんが、射撃全体の流れは把握しています。

いつの時代も白兵戦闘を行う兵種は花形で、火力支援担当の砲兵についてはあまり知られていません。

まあ、話が難しくなるし地味ですからね(笑)

この話を書いていて

「あーこれ途中で読まなくなる人いるだろうなあ」

と思いましたが、「ま、いっか」というノリで書いています(笑)

今回は古来より戦場で大きな役割をもった火砲とその兵士について話していこうと思います。

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原始の火砲

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中国で火薬が発明されてから武器に転じて、「弾丸」を飛ばす兵器として火砲が発明されます。

しかし、製鉄技術や工作技術の問題があり、最初は弾丸を飛ばさずに大きい音を出して相手を怯ませる兵器として中国で誕生しました。

製造技術の問題は常につきまとっていたようで、弾丸を発射出来るようになっても火砲には暴発の危険があり砲兵は命懸けだったようです。

火砲は攻城兵器として有用で城の門や城壁を打ち破るのに使われましたが、その陰で多くの砲兵や技士が犠牲になりました。

火砲のエピソードで個人的に印象が強いのは「コンスタンティノープルの陥落」です。

1453年、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルをメフメト2世が率いるオスマン帝国の軍勢が包囲します。

コンスタンティノープルは半島の先にある都市で、海と堅牢な城壁に囲まれており数多の侵攻を防いだ難攻不落の城塞でした。

特に陸地側の城壁は堅固で、外周の深い堀、その先には三重の高さが異なる壁によって守られています。

大砲でも城壁に有効なダメージは与えられず、多少傷つけてもすぐに補修されてしまいます。

オスマン帝国は軍船による海からの攻撃、精鋭部隊イェニチェリも導入した陸からの攻撃を行いましたが通用せずに攻めあぐねていました。

そこへハンガリー人の技士ウルバンがメフメト2世のもとを訪れます。

ウルバンは彼が考案した大砲を売り込みに来たのでした。

彼の大砲「ウルバン砲」は射程1.6km、発射する石弾の重量は500kgを超える巨砲です。(上記イラスト)

自衛隊の155mm榴弾砲の弾頭重量が40kgということを考えるとスケールの大きさが伝わるでしょうか。

メフメト2世はこれを採用し、実戦投入します。

…が、欠点がありました。

まず極めて命中精度が悪く、城壁どころかコンスタンティノープルという都市そのものにすら当てることが難しい。

また、火縄銃と同じように発射口から火薬と弾を込めるのですが…500kg近い岩を装填するのは一苦労で、再装填には3時間近くかかる。

さらに発射の衝撃は凄まじく、砲身を支えている架台が壊れて技士が転がり落ちた砲の下敷きになることもありました。

なんともトンデモな兵器ですが…メフメト2世はウルバン砲を複数配備し、ひたすら撃ち続けて最終的にはコンスタンティノープルの城壁を破壊します。

莫大な労力と犠牲を払いながらも、難攻不落の城塞を火砲が打ち破った訳です。

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大航海時代の火砲

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造船技術が進み帆船やガレー船が大型化すると主兵装として火砲が採用されるようになりました。

この頃には火砲の製造技術も進み、威力に優れた「カノン砲」、射程に優れた「カルバリン砲」、大質量の砲弾を発射出来る「カロネード砲」、補助兵器である小型の「旋回砲」など様々なバリエーションが登場します。

船体を直接攻撃する以外にも鎖のついた弾を飛ばしてマストを折ったり、「ぶどう弾」と呼ばれる散弾で乗組員を攻撃したりと多様な使われ方をするようになります。

船首砲や旋回砲を除けば基本的に火砲は船の上層甲板か砲列甲板と呼ばれる火砲専用の甲板に配置されています。(上記写真)

火砲を直接甲板に設置してしまうと衝撃で甲板が壊れるため、車輪をつけて反動を逃がしていました。

練度の低い砲手は車輪に足を潰されたり、鼓膜を破ったり、勢いよく後退してくる火砲に跳ねられたりしたそうです。

火砲は船の左右から発射口が出るように配置するため、砲撃をする時は敵船に側面を向ける必要があります。

その際は敵船も攻撃してくるわけで、砲手は火砲の直撃を受けやすい位置にいます。

当時の火砲の有効射程は短く、敵船に有効打を与えるためには接近する必要があったので尚更です。

しかし、イングランド艦隊がスペインの無敵艦隊を破った「アルマダの海戦」ではベテラン砲手の操る長射程のカルバリン砲が活躍したようです。

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間接照準射撃

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第一次大戦の頃には火砲は進化し、火縄銃のような前装式から近代のライフルのような後装式に変わり、精度・射程・装填速度が飛躍的に向上します。

野戦に用いる砲全般を「野戦砲」、その中で榴弾を使用するものは「榴弾砲」と呼ばれるようになりました。

榴弾とは砲弾自体に火薬が内蔵されていて、爆発して金属の破片を撒き散らす弾のことです。

少し時代を遡って、かの有名なナポレオンは野戦砲を効果的に運用することで数々の勝利を納めてきました。

しかし、当時の野戦砲は前線に配置する必要があったため、必然的に火砲は敵に狙われやすいポジションになります。

時代が進み、火砲の性能の向上や通信技術の発達に伴って「間接照準射撃」という技術が確立されていきました。

それまでの火砲は砲手が直接狙いを定める「直接照準射撃」という運用でしたが、「間接照準射撃」は「観測、射撃指揮、火砲」に分かれて作業を分担します。

敵の位置や砲弾の落ちた位置を報告する「観測手」

観測手の報告を元に計算して指示を出す「射撃指揮所」

射撃指揮所の指示に従って火砲を操作する「砲手」

これらをまとめて「砲兵」と呼びます。

「間接照準射撃」によって、遠距離や建物などの障害物で見えない目標も狙い撃てるようになり、火砲自体は安全な後方に配置出来るようになりました。

ただ、観測手は火砲の目となるため敵に近い場所に配置されるので危険度が高く、砲兵であっても白兵戦闘能力や隠密行動が求められます。

射撃指揮所や砲手が絶対に安全かというとそうではありません。

見えない場所から砲弾を降らせてくる火砲は敵にとって厄介な存在で、なんとかして破壊しようとします。

火砲は敵の火砲によって狙い撃たれることが多く、位置を知られることが命取りになります。

航空偵察によって発見されたりしますが、発射音や発射光、砲弾の着弾痕などからも方角を特定されやすいので同じ場所で撃ち続けるほどリスクが高まります。

そのため定期的に場所を移す必要があるのですが、これが重労働で頻繁に行うと兵士が疲弊します。

また、二次大戦になると空挺部隊が砲兵の天敵となります。

空挺部隊は火砲や射撃指揮所がある陣地の後方に落下傘で降下し、破壊工作を行います。

ドラマ「バンドオブブラザーズ」でもウィンターズ中尉率いる空挺部隊が火砲陣地を攻撃するシーンが描かれています。

空挺部隊は白兵戦の精鋭部隊でもあり、まともに戦えば砲兵に勝ち目はありません。

降下中を狙って空中で炸裂する榴弾を使って迎撃したりしますが、それでも狙われると厳しかったようです。

(後編へ続く)

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