最強自衛隊列伝 マナブ

自衛隊系記事
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外界から隔離された獣の檻に、また一人の男がやってきた。

奴の名はマナブ。

丸くて大きい頭、細く短い腕と足、少し出た腹、全てを見下した態度、新隊員の中でも明らかに異様な雰囲気を醸し出していた。

今回は、今もなお記憶に鮮明に残る男【マナブ】について語っていこう。

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マナブ、迷彩服着るってよ

マナブは私の同期の親類であったため、入隊前からぼちぼち話を聞いていた。

マナブは高校を卒業してすぐ自衛隊に入隊した。

マナブは高校3年間を野球部の補欠として過ごしたらしい。

補欠とはいえ、野球部出身者は自衛隊の適性が高い。

優秀な隊員になるだろうと思った。

4月、新隊員教育隊に入ったマナブは

「俺は元暴走族の総長だ!」

と威張り散らし始めた。

ズッコケた。

さらには

「俺のバックには○○3曹がついてんだぞ!」

と同期の名前を使い、周りを威嚇し始める。

迷惑極まりない。

ちなみに同期は虫も殺さないような大人しい奴だ。

しかし、その件について先輩からイジられた同期はキレ散らかしてマナブをシメた。

同期にとっては完全な貰い事故である。

その後は同期の名前を使わなくなったが、オラついた態度は変わらなかったようだ。

マナブは、予想に反してロックなスタートを切った。

洗礼

新隊員教育隊を卒業したマナブは、私と同期のいる中隊に配属された。

当初、オラついた態度は変わらなかったが、速攻でボコボコにされて一気にマイルドになる。

しかし、マナブの愛読書は「クローズ」だ。

全身を包む中二病のオーラは抑えることが出来なかった。

暴走族の総長って…お前野球部だろ。

というツッコミに対して

「高3の2学期まで野球部で、3学期は総長やってました」

と、通勤ラッシュの埼京線みたいな経歴を話し始めた。

さらには

「喧嘩無敗」

「俺の両手には悪魔が宿っている」

などと語り出してはボコボコにされていた。

とにかくブレない。

マナブの拳

野球部出身にも関わらずパワーもスタミナも無いマナブだったが、意気揚々と徒手格闘訓練に志願してきた。

防具の重さに負けて虫の息だが、気合いの入った声で

「手合わせお願いします!」

と私に言ってきた。

私の実力は可もなく不可もなくだから丁度良かったのかもしれない。

怪我させないように様子見で打った左がクリーンヒットし、吹っ飛んで転がるマナブ。

流石に予想外である。

冗談かと思うほど弱かった。

他の隊員にもボコボコされていたが、終わった後でやり遂げた男の顔をしているマナブを見て

「こいつは大物かもしれない」

と思った。

余談だが、マナブの両手にはマナブ自身がつけた名前がある。

ディアブロなんちゃらという名前だ。

ディアブロの凄いところは、避けていないのに当たらないというところだ。

誰も傷付けない拳である。

いい加減、暴走族に怒られるぞ。

マナブとタバコ

マナブはタバコが吸えない。

しかし、不良のマストアイテムであるタバコに、マナブが手を出さないはずが無かった。

ある日の喫煙所に、新品のセブンスターと新品のジッポーライターを持ったマナブが現れた。

意気揚々とタバコをくわえて火をつけようとするマナブだが、なかなか火がつかない。

タバコは少し吸いながら火をつけるものだ。

そのことを教えると

「ウッス」

と答えて火をつけ、煙を吸いこむのだが…

ハムスターみたいに頬を限界まで膨らませて硬直し、ぎこちなく吐き出した。

笑うなという方が無理だ。

吸ってから深呼吸して肺に入れると教えたら、案の定むせて涙目になっていた。

それ以降、たびたび喫煙所に現れてタバコを吹かしてはツッコまれていた。

私はアイスベープというニコチンの入っていない電子タバコを持っていたのだが、ある日マナブが

「アイスベープを売って下さい」

と言ってきた。

興味本位で買ったものの、全然使っていなかったので2000円で売ることにした。

嬉しそうに去るマナブ。

少し経ってから、なんか嫌な予感がして様子を見に行った。

廊下の目立つ所でウンコ座りをしたマナブがアイスベープを吸っていた。

それを見た先輩に蹴り飛ばされるマナブ。

そりゃそうなるよ。

マナブと過呼吸

マナブは毎日のように怒鳴られていたが、完全な自業自得だったので手助けしようもなかった。

ある日、私の後輩がストレスから過呼吸で倒れ、色々あって問題になった。

それを知ったマナブはそれ以降、怒鳴られる度に「ウッ」と胸を抑えてうずくまるようになった。

どう見ても猿芝居だが、万が一にも本当だったら困るので毎回介抱されるようになった。

暴走族の元総長という設定はどっか行ったらしい。

色々と酷すぎて、忌々しげに見られていたはずのマナブの同期にも庇われるようになった。

そんなこんなで1任期を乗り切ったマナブは

「俺はビッグになる」

と、上京するバンドマンみたいなことを言って退官していった。

しばらくは付近のパチンコ屋で目撃証言が相次いでいたが、いつしか噂を聞かなくなった。

元気にしているだろうか。

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