朱に交われば赤くなり、交わり続けると黒くなる

哲学系記事
スポンサーリンク

思想が急進的になることを先鋭化と言います。

目的の実現を駆け足で行おうとするので過激化しやすい状態です。

極端な思考に陥り、自分の信じるものが絶対だとしている人に多い状態ですね。

「自分の正しさに拘る愚」という記事で、都合の悪い情報を拒否して思想が偏っていくという話をしました。

その偏った思想を絶対のものだと自信を持つ時、集団が関係していたりします。

今回は、そんな感じの話です。

相互の肯定

「マグロは魚ではない」

そう言われた時「なに言ってんだコイツ?」という感想を抱くと思います。

では、自分が属する集団の全員が同じ事を言っていたらどうでしょうか?

なんとなく「実は魚じゃないのかも?」と疑問を抱き始めると思います。

まさに、朱に交われば赤くなる…です。

さらに、その集団と関わり続けるとマグロが魚ではないことが当たり前になります。

そうなった時に一般的な常識を持つ人から

「いや、マグロは魚だろ」

と言われた時

「いやいや、魚じゃないから」

「変なのはお前だから」

「周りがみんな魚じゃないって言ってるし」

と考えが事実から外れていきます。

朱に交わり続けた結果、歪みが濃くなり黒くなってしまうわけです。

これは洗脳の手段にも使われるもので、シンプルで効果的な方法です。

集団が抱く特殊な常識を世の中の常識であるかのように誤認してしまう。

意図的に洗脳しようとする人がいなくても、自然と集団に染まってしまう。

集団の意見がどんなに非論理的であっても、それを信じてしまうという…歪んだ状態になってしまいます。

私が高校生の時、両親が3日間家を空ける事になりました。

その間、私と姉が残る事になり、食事代を置いていく話になったのですが…

姉が両親の前で

「コイツはプロテイン飲んでるから食事代は私だけでいい」

と言い出しました。

両親も「そうだな」と納得します。

私は当時から筋トレをしていたので、バイト代でプロテインを買っていたんですよ。

しかし、あくまで栄養補助食品なので、食事をしなくて良い訳がありません。

それをどんなに説明しても取り合っては貰えず、自腹で3日間を過ごすことになりました。

家族は誰一人として、プロテインについて正しい知識を持っていません。

にも関わらず、私が三人の共通の敵となり、三人はお互いに肯定し合う事で間違った認識を強化していきます。

まるで論理的とは言えない状況です。

私の家族は昔から私を敵にすることで纏まっていました。

姉が両親を扇動することが多く、両親は同じ思想を持つ姉の意見を無条件で信じます。

反対に私の意見がどんなに正当性があっても取り合って貰える事はありませんでした。

これと同じような事が社会ではよく起きています。

過激な思想の持ち主は、客観的に見たら明らかにおかしい事を言っていたりします。

しかし、同じ思想を持つ人間同士がお互いを肯定し合う事で

「皆が言っているから自分は正しい」

という自信を強めていく。

そのため、疑いもなく堂々と非論理的な意見を話せるわけです。

朱に交われど朱に染まらない

自衛隊という組織は非論理的で非常識な場所です。

独特の価値観があり、良い面もありますが悪い面も多いです。

感情論が強く、論理的な話が通じない人が圧倒的に多い。

私がコンプライアンス教育をしている最中に

「話聞いてんのかテメエ!」

と部下を殴る隊員もいる。

お前がまず話を聞け!…という話です。

自衛隊は階級よりもヒエラルキーが物を言う組織です。

ヒエラルキーが高ければ何をしても許され、ヒエラルキーが低ければ何をしても叩かれる。

閉鎖された男社会なので必然的に暴力的になり、ヒエラルキーのためにマウントの取り合いと足の引っ張り合いになります。

論理的な人間は嫌気がさしてすぐに辞めてしまいますが、この手の人間は辞めて正解だと思っています。

逆に自衛隊の価値観に染まり、偏った常識を持つ人間が社会に出ると…まあ、分かりますよね。

私の父親も価値観に染まった自衛官だったので、ヤベー奴でした。

一方で、自衛隊に適応しながら論理的思考を維持する自衛官も一定数います。

私もその一人です。

なぜ、自衛隊に染まらなかったかと言うと、外部との関わりがあったからです。

私は多趣味で、とにかく色々な事をやっていたから外部との繋がりが強く、自衛隊の非常識さを客観的に理解していました。

一方で、普段から自衛官とだけしか接触しない人間は、どんどん考え方が偏っていきます。

偏った思想の人間は議論が出来ません。

自分が正しいという結論ありきで話を進めるからです。

自衛隊の先輩でも話を聞くと言いながら、不利になるとキレて殴る人が多かったです。

一つの組織の中だけで生きていると、組織のおかしい部分にも気が付かず洗脳されていきます。

ブラック企業で働く人は、自分の会社がブラックだと気付いていなかったりします。

特定の集団だけでなく外部との関わりを持ち、客観的に自分の属する集団を見る。

これって凄く大事なことなんですよ。

社会は金床、民衆は金槌

「社会は金床、民衆は金槌という至言」という記事でも紹介しましたが、パンプキンシザーズという漫画に登場する言葉です。

自分の未熟な思想はただの鉄の塊で、社会という金床で民衆という金槌に打たれる。

そうして見栄や私欲などの不純物を取り除き、一振りの剣のように洗練された思想になる…という言葉です。

そもそも漫画家は思想家や哲学者が多いですが、この言葉の完成度の高さには感銘を受けました。

同じ思想を持つ人間と接することは心地良いものです。

しかし、同時に思想が偏っていきます。

自分を肯定してくれる人間とだけ関わる。

それは悪い事だとは思いませんが、成長もしません。

自分を否定する人間の批判や非難は痛みを伴いますが、同時に自分を成長させるものです。

もちろん、誹謗中傷やアホみたいなマウントに付き合う必要はありませんけどね。

誰しも当初は不純物だらけの正義を持っています。

色々な場所で色々な人から批判や非難を浴びることで、何度も折れそうになりながら鍛えられるものです。

正直、相当しんどいですが…

洗練されれば、ちょっとやそっとの批判や非難は正面から打ち破れるようになる。

鍛えあげれば他者の正義と打ち合っても簡単に折れることは無くなります。

逆に、批判や非難すら誹謗中傷と切り捨て、他者の正義との打ち合いを避ける。

安全圏から一方的に他者の正義を叩く。

それは自分の正義が脆弱であると言っているようなものです。

人は自分の正しさを求めるものですが、真に正しさに近づくためには自分の正義を鍛える事しかありません。

そして、鍛え上げた正義があれば朱に交われど赤くはならないものです。

コメント

Copied title and URL