過誤の報告

哲学系記事
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警察官の採用試験に受かると警察学校という場所で教育を受けます。

当時はスゲー厳しい所で、私は今でも警察学校の近くを通ると脂汗が出ます。

そんな警察学校の独特な風習として「過誤の報告」がありました。

過誤(かご)とは要するに「やらかし」の事で、失敗をする度にクソ怖い担任教官に報告しなければなりません。

そもそも失敗した時点で怒られるのに担任教官に報告してまた怒られる

「死体蹴りじゃねーか」

と、当時は思っていました。

今回は、そんな過誤の報告の話です。

過誤の報告

私が当時いた警察学校は…もうほんとにクソ怖い場所で、卒業した直後は夢でうなされるほどでした。

当時の自分がクソザコだった事もありますが、だとしてもスゲー厳しい所でしたね。

授業に忘れ物をしただけで死ぬほど詰めれるし、倒れるまで訓練をさせられる。

指導の仕方も公開処刑みたいなやり方が多くて、見ている方もメンタルをガリガリ削られる。

毎日のように罵声や怒号が飛び交い、恐怖にひきつった学生の返事が聞こえる。

訓練中に倒れた学生を搬送する救急車が毎日のように来て、それが日常風景になる。

夜になると学生が電話ボックスに並び、泣きながら「もう辞めたい」と電話している姿が見られます。

そんな警察学校の風習の一つが、自分がやらかした事を報告する「過誤の報告」です。

私が最初に過誤の報告をした時の理由は、セリフを噛んだ事です。

刑法の教官に授業開始の報告をする際、定められた報告のセリフを噛んでしまい、焦って二度三度と噛んでしまいました。

その教官に胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられ、死ぬほど罵声を浴びせられる。

これだけでもキツイんですが、その事を担当教官にも報告しなければならない。

まあ、スゲー気が重いわけですよ。

100%罵声を浴びせられるわけですから。

しかし、過誤の報告をしなかった事がバレたら、更にえげつない制裁が加えられます。

実際に報告せずに誤魔化した人もいて…

それがバレて死ぬほど詰められ、翌日に自分から辞めていきました。

だから、嫌々ながらも教官室へ向かうわけです。

教官は既に話を聞いている場合が多く、教官室に入ると教官が険しい顔で私を睨みつけてくる。

この時は「終わったら辞めよう」とすら思います。

氷の上を歩くような足取りで教官の前に行き、礼をしてから

「か…過誤の報告に参りました!」

と…噛みました。

そこからは教官の怒号から罵声が始まり、嵐が過ぎ去るまでひたすら耐え続けます。

死ぬほど「はい!」を連呼して、嵐が去ったら礼をして帰る。

で、同期に背中を叩かれて「お疲れ様」と言われる。

これが過誤の報告です。

過誤の報告をする理由

過誤の報告は別にイジメを目的としているわけではありません。

上官目線で考えた時、部下が失敗を隠すのはとにかくヤベー事なんですよ。

早目に報告してくれれば対処が出来るものの、隠蔽した事実が明るみに出た時は大問題になりかねない。

不義を働いた時、懲戒免職になる事もザラなのが警察官という仕事です。

ただ、失敗を正直に話しても許されないのが警察官の厳しさでもあります。

職責がかなり重い仕事であるため、処分が下る事もあるし民間人相手のトラブルなら悪ければ裁判沙汰になる事もある。

まあ、それでも隠蔽がバレるよりはマシなんですけどね。

どんな時でも失敗をしたら腹をくくって報告しなければならない。

仮に報告した後が地獄でも、被害を最小限に留めるためには誠実である必要がある。

目の前の不安や恐怖に飲まれないように警察学校の内から叩き込むわけです。

この過誤の報告から得た教訓は、私が人生で学んだ大切な物の一つです。

スゲー怒る相手に正直に謝っても、許して貰えない事の方が多い。

全ての人が冷静で合理的なわけもなく、怒りが収まらない人は本当に収まらないです。

だから、誤魔化したくなってしまうのは人間らしいと言えばらしい。

実際、問題に直面した時に素直に謝れる人は少ないですし、不誠実を責める人達も当事者になったら誠実でいられるとは限らないです。

誠実な対応って、実は難しいんですよ。

大抵の場合、不誠実は恐怖から来るものですからね。

素直に謝れるのは結構スゴイ事です。

自分の経験上も他人を観察してきた経験からも、正直で誠実である事が問題を早く解決出来ます。

しかし、大きな問題であるほど恐怖は大きくなり、誠実である事が難しくなる。

誤魔化そうとしてしまうのは、目の前の恐怖に怯んでダメージを0に抑えようとしてしまうからです。

恐怖した時ほど傷を負う事に抵抗がありますからね。

ただ、問題を起こした時点でダメージを防ぐ事はまず無理です。

だから、まずダメージを負う事は覚悟するしかない。

その上で…追加ダメージや最悪の事態を防ぐために余計な事をせず潔く謝る。

大変ですが、それが唯一無二の最善策なんですよ。

過誤の報告はそれを教えてくれる訓練でした。

緊急時のマニュアル

人は他人に誠実さを求めるもので、自分に対する誠実さを当然の事だと考える人も多いです。

ただ、誠実でいるためには結構なメンタルの強さを必要とします。

不誠実さは、悪性というよりは人が持つ弱さなわけです。

だから、大事な時に誠実でいられる人は少ない。

自分が直面した時は焦りや不安にかられて問題から逃げたくなってしまう。

パニックになり、悪手を打ってしまう事もあります。

なので、冷静でいられる自信が無いのなら緊急時のマニュアルを作るのをオススメします。

私がクソザコだった警察学校時代、自分が慌てる事が分かっていたのでメモ帳の最初のページにマニュアルを作っていました。

問題発生

初動対処(火災など放置出来ない事の対処)

その場の教官に報告

指示を仰いで必要な対処をする

同期の取締役に報告

担任教官に報告(報告の様式も記載)

必要に応じて担当者に謝罪

という感じですね。

自分が置かれた状況に応じて、適切なマニュアルを用意するわけです。

一見すると簡単な事ですが…

動揺すると分からなくなるものですし、不安と恐怖に足を引っ張られて省略しようとしたり余計な事をしてしまう。

今は自然と対処が頭に浮かぶから平気ですが、それでも慣れない事に対して私はマニュアルを作ります。

今までやってきた仕事柄、ヤベー時に冷静でいるのが如何に難しいかを知っているからです。

普段から行っている報告様式すら、頭から飛んだりするんですよ。

緊急時のマニュアルを作る事もリスクヘッジの一つというわけです。

学校の避難訓練なんかをやると「バカらしい」と思う人が多いでしょう。

ただ、実際に大規模な火災現場では迷走して死者が出る事も多いです。

同じように大きな失敗をした時、人はパニックになります。

その時に迷走しない保証は無い。

それを防ぐためのマニュアルというわけです。

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